2025年~雇用保険法が変わります!
こんにちは、OAG社会保険労務士法人の木内です。
今年5月10日、改正雇用保険法が成立しました。この改正では、多様な働き方へ対応することを目的に、被保険者の適用拡大や給付金の創設などが行われます。
今回は、2025年以降の改正雇用保険法の中から、みなさまへの影響が大きいと思われる内容についてお話ししたいと思います。
●【自己都合離職者の給付制限短縮】(2025年4月施行)
雇用保険の基本手当には、正当な理由なく自己都合で離職した労働者に対して、原則2か月間の給付制限があります。これは、「自ら失業状態を選ぶのは労働の意思がないから」であると解釈されてきたからです。
しかし、最近では転職のために離職する人も増加しており、働く意思を持つ自己都合離職者が増えています。そこで、転職を目指す人が安心して再就職活動を行えるよう、2025年4月から給付制限期間が1か月へ短縮されます。ただし、5年間で3回以上の自己都合離職の場合には3か月となります。
さらに、離職期間中や離職日前1年以内に教育訓練給付制度を利用し教育訓練を行った場合は、給付制限が解除されます。
●【出生後休業支援給付・育児時短就業給付の創設】(2025年4月施行)
これまでの「出生時育児休業給付」、「育児休業給付」に加え、新たに「出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」が創設されます。
- ・出生後休業支援給付
男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内に、両親とも14日以上の育児休業を取得すると最大28日間、休業開始前賃金の13%の額が支給されます。
既存の育児休業給付に出生後休業支援給付が追加されることで、休業開始前賃金の80%の額が支給されることになり、社会保険料の免除を合わせると手取り額が休業前と変わらなくなります。
- ・育児時短就業給付
現在、育児のために短時間勤務となり、賃金が低下した人への給付制度はありません。このため、2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合に、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を支給する「育児時短就業給付」が創設されます。なお、給付金は賃金額と給付額の合計額が時短勤務前の賃金を超えない範囲で支給されます。
●【育児休業給付の延長における審査の厳格化】(2025年4月施行)
育児休業給付金は、原則として、子が1歳に達する日までの休業期間に支給されます。しかし、子が1歳に達した日の後の期間であっても、保育所などへの入所申込みを行ったが、当面入所できない場合には、1歳6か月または2歳に達する日までの延長が例外的に認められています。
これまでは、市区町村の発行する入所保留通知書などにより延長を確認していましたが、2025年4月より、既存の確認に加え、利用申し込みを行ったときの申込書の写しと、保育所までの通所時間や入所内定を辞退した理由等を記載する申告書も必要となります。
●【高年齢雇用継続給付の支給率の縮小】(2025年4月施行)
高年齢者雇用継続給付は、被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の人で、賃金が60歳時点の75%未満となった場合に、賃金の15%を支給する制度です。2025年4月より、この給付額が60歳以後の各月の賃金の15%から10%へ縮小されます。
●【適用要件の拡大】(2028年10月施行)
これまでは週所定労働時間が「20時間以上」の労働者が雇用保険の対象でしたが、2028年10月からは「10時間以上」の労働者へと対象が広がります。
また、適用要件の拡大に伴い、20時間を基準として設定されていた他の基準も合わせて変更されます。
なお、要件の1つである「継続して31日以上の雇用が見込まれること」については変更ありません。
参考|第196回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40671.html
【まとめ】
多様な働き方を支えるという意味では、今回の改正は労働者にプラスになる面が多いものと感じます。その反面、労務担当者にとっては、管理や手続きの負担が増すことも予想されます。施行後に慌てることのないよう、事前に準備しておきましょう。
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