住宅借入金等特別控除に係る税務上の取扱いについて
こんにちは。アカウンティングサービス部の田村です。
今回のコラムは、「住宅借入金等特別控除に係る税務上の取扱い」についてです。
年末調整、確定申告の時期となりましたので、サラリーマンの方など、多くの方が
利用される「住宅借入金等特別控除」をとりあげさせて頂きます。
個人が、マンションや戸建て住宅などマイホームを住宅ローン等を利用して取得又は
増改築等し、令和2年12月31日までに自己の居住の用に供した場合で、一定の条
件を満たした場合には、住宅借入金等の年末残高の合計額等を基礎として計算した
金額を各年分の所得税から控除することができます。
- 【1】対象
- ① 新築住宅の新築又は取得
- ② 中古住宅の取得又は増改築等
- ③ 認定住宅(認定長期優良住宅又は認定低炭素住宅)の新築又は取得
- ④ バリアフリー改修工事や省エネ改修工事、多世帯同居改修工事を含む増改築等
- 【2】要件
- ① 新築、取得又は増改築等の日から6ヶ月以内に居住の用に供し、適用を受ける
- 各年の12月31日まで引き続いて住んでいること。
- ② この特別控除を受ける年分の合計所得金額が、3000万円以下であること。
- ③ 住宅の床面積(登記上)が50㎡以上であり、床面積の2分の1以上の部分が
- 専ら自己の居住の用に供するものであること。
10年以上に渡り分割して返済する方法になって新築、取得、増改築等の為の
一定の借入金又は債務があること。
※バリアフリー等特定増改築等の場合は5年
- ④ この適用を受ける個人が、一定期間に、居住者用財産を譲渡した場合の長期譲
- 渡所得の課税の特例等の適用を受けていないこと。
(一定期間)
イ 令和2年4月1日以後に譲渡した場合
その居住の用に供した年とその前2年・後3年の計6年間
ロ 令和2年3年31年以前に譲渡した場合
その居住の用に供した年とその前後2年ずつの計5年間
- ⑤ 中古住宅の場合
上記①~④に加え以下のいずれにも該当する住宅であること。
イ 建築後使用されたものであること。
ロ 次のいずれかの家屋であること
- (イ)取得日以前20年以内(マンション等耐火建築物の場合25年以内)
- に建築されたもの
- (ロ)地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに
- 準ずるものに適合するもの
- (ハ)上記以外で、耐震改修により家屋が耐震基準に適合することにつき
- 証明がされたもの
ハ 取得の時に生計を一にしており、その取得後も引き続き生計一にする親族や
特別な関係のある者などからの取得でないこと。
ニ 贈与による取得でないこと。
- ⑥ 増改築等の場合
上記①~④に加え以下のいずれの要件にも該当すること
イ 自己が所有し、かつ、自己の居住の用に供する家屋について行う増改築等で
あること。
ロ 次のいずれかの工事に該当するものであること
- (イ)増築、改築、建築基準法に規定する大規模な修繕又は大規模の模様替
- えの工事
- (ロ)マンションなどの区分所有建物のうち、その人が区分所有する部分の床、
- 階段又は壁の過半について行う一定の修繕・工事
- (ハ)家屋(マンションなどの区分所有建物にあっては、その人が区分所有す
- る部分に限ります)のうち居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、
- 玄関又は廊下の一室の床又は壁の全部について行う修繕・模様替えの工事
- (ニ)建築基準法施行令の構造強度等に関する規定又は地震に対する安全性に
- 係る基準に適合させるための一定の修繕・模様替えの工事
- (ホ)一定のバリアフリー改修工事・省エネ改修工事・多世帯同居改修工事
ハ その工事費用の額(平成23年6月30日以降に増改築等に係る契約を締結し、
その増改築等の費用に関し補助金等の交付を受ける場合はその額を控除した額)が
100万円を超えており、その2分の1以上の額が自己の居住用部分の工事費用である
こと。
【3】控除期間
10年(特例措置として特別特定取得(消費税率10%が適用された住宅取得)の場合は13年)
※バリアフリー等特定増改築等の場合は5年
- 【4】計算方法
住宅ローン等の年末残高の合計額(家屋の取得価額や増改築の費用等の額の方が少ない場合
にはその額) ×1.0%
上限40万円
(住宅の取得等が特定取得以外の場合は20万円、認定長期優良住宅などは 50万円)
※バリアフリー等特定増改築等の場合は別途計算
※住宅の取得等が消費税率10%時の特別特定取得に該当する場合特例
11年目から13年目までの各年の控除額は一般住宅等の区分に応じ以下の➀又は➁の
いずれか少ない金額を控除
➀住宅借入金年末残高 × 1%(※1.2%)
※東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の
所得税額の特別控除の控除額に係る特例の対象となる再建住宅
区分の場合は1.2%
➁建物購入価格 × 2% ÷ 3年
※「住宅借入金年末残高」「建物購入価格」については、一般住宅等の
区分に応じ限度額あり
【5】新型コロナウイルス感染症による特例措置
住宅ローン減税の控除期間13年の特例措置について、新型コロナウイルス感染症の影
響により入居が期限(令和2年12月31日)に遅れた場合でも、一定の期日までに住
宅取得契約を行っている等の要件を満たしていれば、特例措置の対象となります。
(変更部分)
令和2年12月31日までに入居→令和3年12月31日までに入居
(要件)
- ① 以下の期日までに契約が行われていること。
・注文住宅を新築する場合:令和2年9月末
・分譲住宅・既存住宅を取得する場合、増改築等をする場合:令和2年11月末
- ② 新型コロナウイルス感染症の影響によって、注文住宅、分譲住宅、既存住宅又は
- 増改築等を行った住宅への入居が遅れたこと。
【6】よく質問のあるQ&A
- ① 居住開始前に住宅の増改築等をした場合
- Q 私は、今後、田舎に所有している住宅を増改築して居住の用に供する予定ですが、
この場合、住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできますか。
A 現在居住の用に供していない家屋であっても、自己が所有している家屋に一定
の増改築等をして、その増改築をした部分を居住の用に供した場合
(その増改築等の日から6ヶ月以内に居住の用に供した場合に限ります。)で、
その他の要件を満たしていれば、その増改築について住宅借入金等特別控除の
適用を受けることができます(特定増改築等住宅借入金等特別控除についても
同様です)。
- ② 2ヶ所から給与の支給を受けている場合の住宅借入金等特別控除
Q 2か所から給与の支給を受けている者が、主たる給与の年末調整で住宅借入金等特
別控除の適用を受けたところ、控除額の全額を控除することができませんでした。
この場合どうしたらいいですか。
A 確定申告することにより年末調整の際の住宅借入金等特別控除の控除不足額が控
除できる場合があります。
- ③ 年末調整残高証明書が年末調整までに間に合わなかった場合
Q 年末調整に関する必要書類の提出期限までに、金融機関から「住宅取得資金に係
る借入金の年末残高等証明書」の交付が受けられない場合は、どのようにすれば
よいのですか。
A 何らかの事情で年末調整に関する必要書類の提出期限までに「住宅取得資金に係る
借入金の年末残高等証明書」の交付が受けられない場合は、確定申告によって住宅
借入金等特別控除を受けることができます。また、翌年1月31日までに「住宅取得
資金に係る借入金の年末残高等証明書」の交付を受けたときは、その証明書を給与の
支払者に提出して年末調整の再計算を受けることもできます。
- ④ 確定申告書の提出期限
Q 私は給与所得者で確定申告の義務はない者です。ところで、昨年ローンで住宅を購
入し住宅借入金等特別控除を受ける予定ですが、いつまでに申告する必要がありま
すか。
A 税務署への申告は、居住した年の5年後の12月31日まで可能です。但し、控除さ
れる額が所得税から引ききれない場合は、一定の計算の下で住民税から控除される
仕組みとなっています。
- ⑤ 新たに取得する中古住宅に増改築を行う場合
Q 私は今年、築後5年の中古住宅を取得(特定取得以外に該当)する予定ですが、
その住宅に入居する前又は入居した後に増改築(特定取得に該当)を行った場
合、住宅借入金等特別控除の額はどのように計算すればよいのでしょうか。
A その増改築が住宅借入金等特別控除の対象となる増改築に該当する場合には、その
増改築等の実施が入居前であるか又は入居後であるかを問わず、中古住宅の取得に
係る住宅借入金等特別控除に加え、増改築等に係る住宅借入金等特別控除の適用を
受けることができます。具体的な計算方法は、中古住宅の取得に係る住宅借入金等
特別控除の額と増改築等に係る住宅借入金等特別控除の額を別々に計算(100円未
満の端数は切捨て)し、それらを合計した額が住宅借入金等特別控除額(異なる
住宅の取得等ごとに定められた最も高い控除限度額が限度となります。)となります。
なお、住宅の取得後に行う工事等が比較的軽妙な修繕などで住宅借入金等特別控除の
対象となる増改築等に該当しない場合には、その工事等を入居前に行っているときに
限りそれに要した費用を住宅の取得に係る取得価額に含めた上で住宅借入金等特別控除
額を計算することとなりますが、その工事等を入居後に行っているときは、住宅借入金
等特別控除の対象とはなりません。
- ⑥ 控除を受けられる回数の制限
Q 現在住宅借入金等特別控除を受けている人が、買い替えを行って住宅ローンなどの
借入金で新たに自宅を取得した場合、再び住宅ローンを利用することはできますか。
A この制度には、適用を受ける回数の制限がありませんので、要件を満たせば何回で
も利用することができます。買い替えにより、現在受けているローン控除の適用はな
くなりますが、新たに取得した自宅については、改めてローン控除の適用を最初から
受けることができます。
ただし、現在の自宅を譲渡したことにより生じた譲渡益について、譲渡所得を計算
する際に認められる特別控除(居住用財産を譲渡した場合の3000万円控除(措置法
35条1項))などの特例措置(譲渡損失が生じた場合の特例は除く)を適用するなど
一定の場合は、住宅借入金等特別控除の適用は受けられません。
新たに住宅借入金等特別控除を受けられる方は、入居の翌年は確定申告をしなければなりません。
まずは、必要書類等の準備を始めてはいかがでしょうか。
参考資料
国税庁HP タックスアンサー№1210~1234 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/shoto303.htm