新型コロナウイルスの影響により 役員報酬を減額・増額する場合
こんにちは。アカウンティングサービス(AS)の内田です。
新型コロナウイルスの影響により売上が下がってしまい期中に役員報酬を減額し
経営や従業員雇用の維持を考えている社長は多いのではないでしょうか。
役員報酬の改定には一定のルールがあり注意を要します。
今回は「新型コロナウイルスの影響により役員報酬を減額・増額する場合」について
見ていきたいと思います。
- 役員報酬を損金計上するには
役員報酬を損金計上するためには次の3つから選択します。
- ①定期同額給与 ②事前確定届出給与 ③利益連動給与
ここでは一般的な定期同額給与の改定についてご説明します。
「定期同額給与」は、事業年度開始の日から3か月以内に株主総会や取締役会を開き
役員報酬の金額を決定し期中は毎月一定の金額を支給し続けなければなりません。
今回の新型コロナウイルスの影響で問題になっているのが、この「定期同額給与」になります。
◇通常改定以外での定期同額給与の変更
経営が悪化した場合、急場を凌ごうとまずは社長の役員報酬の減額を検討する場合があります。
しかし、役員報酬を期中に変更すると「定期同額給与」ではなくなり損金計上が認められない場合があります。
通常改定以外で期中に定期同額給与を変更するには以下の場合でなければなりません。
- ①臨時改定事由(法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大 な
- 変更その他これらに類するやむを得ない事情)
② 業績悪化改定事由(事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したこと
その他これに類する理由)
◇新型コロナウイルスの影響による役員報酬の変更(減額)
新型コロナウイルスの影響による役員報酬の減額については業績悪化改定事由に
該当するか否かがポイントになります。
国税庁は「新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係」のFAQにおいて
「業績が悪化した場合」と「業績の悪化が見込まれる場合」の2つの事例をあげています。
- ①業績が悪化した場合に行う役員給与の減額【4月13日追加】(イベント業)
感染拡大防止の観点などから、イベント等のキャンセルや休業要請で収入がなくなり
家賃や給与等の支払いが困難となり、取引銀行や株主との関係からもやむを得ず役員給与を
減額しなければならない状況にある場合は、この業績悪化改定事由に該当します。
②業績が悪化した場合に行う役員給与の減額【4月13日追加】(観光業)
現状では、売上などの数値的指標は著しく悪化していないとしても、観光需要の
著しい減少も見受けられる。原状回復する見通しも立たないことから経営改善策を講じなければ、
急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避と判断
できるので、業績悪化改定事由に該当します。
こちらの2事例では現状の業績悪化だけではなく業績悪化見込みによる場合でも該当する内容となっていることから、弾力的な対応が執られていると考えられます。
参考:国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの
当面の税務上の取扱いに関するFAQ 5 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の
取扱い関係(法人税に関する取扱い問6)
◇業績改善による役員報酬の増額変更
また、同期中に業績が改善してきたことで減額した役員報酬を戻したいと考えるのではないでしょうか。
この場合「臨時改定事由」に該当するか否かがポイントになります。
単に、業績が改善したことで減額した役員報酬を増額する場合は、臨時改定事由には該当しないため
損金として認められません。
緊急事態宣言により、休業を強いられ本来の業務を行えなかったが、緊急事態宣言の解除により
本来の通常業務へ戻った場合や役員が新型コロナウイルスに感染した場合などは臨時改定事由
「法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類する
やむを得ない事情」に該当し、定期同額給与の増額が認められると考えます。
この困難な状況において役員報酬の改定は経営者としては考えざるを得ないことと思います。
上記でご説明させていただいたように、役員報酬を改定するには注意が必要となります。
変更をお考えの際は、まずは税理士等専門家へご相談下さい。